建設業は残業時間が長い?労働基準法に定められた上限「月45時間以内かつ年360時間以内の時間外労働」が厳しい現実とは

私は、建設業で施工管理をして約10年です。大学卒業後この業界に入り、これまで他の業界で働いたことがなく、残業は当たり前だしサービス残業も普通だと教えられて育ってきました。「月45時間以内かつ360時間以内の時間外労働」は労働基準法に定められた上限です。この時間外労働の上限規制は、働き方改革の施策の一環として2019年4月に施行され、建設事業は5年間上限規制の適用が猶予されています。


 5年の猶予期間経過後の取扱について(2024年4月1日~)

時間外労働の上限規制(時間外労働の上限を法律で罰則付きで規制)
■2019年4月に施行される改正労働基準法においては、法律上、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的の特別な事情がなければこれを超えることができなくなります。

■臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、以下を守らなければなりません。

  • 時間外労働年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、2~6ヶ月平均がいずれも1月あたり80時間以内
  • 時間外労働月45時間を超えることができるのは、6ヶ月が限度
■上記に違反した場合には、罰則(懲役6ヶ月以下又は30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

■ただし、労働基準法第139条により、建設事業のうち、災害時における復旧・復興の事業については、当分の間、複数月平均80時間以内・1か月100時間未満の要件は適用されません。

※復旧・復興においても、年720時間の上限及び、月45時間を超えることができるのは、6ヶ月の限度は適用になります。

参考:「平成30年11月 行政説明資料 厚生労働省都道府県労働局」


今回は、この「月45時間以内かつ360時間以内の時間外労働」が建設業で実現可能かということについて書きたいと思います。


時間外労働をする理由


時間外労働が多いということについて、以下4つの理由をまとめました。

1.作成する書類が多い

納品に必要な書類作成、これに一番時間がかかります。

納品に必要な工事書類
  • 施工計画書
  • 材料承認
  • 施工体制台帳
  • 安全管理
  • 品質管理
  • 工程管理
  • 工事打合簿
  • 段階確認
  • 立会願
  • 出来形管理
  • 工事写真
  • 建設副産物など 基本的な工事書類 

+αの部分は絶対提出するものではありませんが、現場施工の創意工夫など、検査時にアピールするものや過去の検査での要望された書類がほとんどです。

工事書類には、出来形管理や品質管理など、現場作業が終わらないとできない書類も多くあります。そのため、特に急ぎではない書類も、毎日作成しておかないと急な仕事に対応できないので、ほぼ毎日21~22時ぐらいまで仕事をするようになります。工事検査前は日を跨いだり、3~4日徹夜が続く日もあります。

ーなぜ時間がかかるのかー

色んな発注者がいます。国交省・都道府県の土木/農林・市町村等、発注者によって求められる書類も微妙に違いがあります。

書類によっては、必要・不要などある上、納品検査室の検査官によっては、「別の工事ではこんな風にまとめてあってすごく見やすかった」と言われたりもします。「これを言われたら次の検査では作成するしかないだろ・・・」とも思いますが、過去の検査で色々とあったので、納品検査室及び検査官は工事評定表に記載しているもの以外は、正直あまり求めて欲しくないです。


2.人材不足

建設業界は慢性的な人材不足です。そのため、1つの現場に配置する人員は少なく、会社や工事場所、工事規模により違いはあるのですが、1~2名で対応している現場も多くあります。

私が勤めている会社では、県発注の工事であれば最大4億円規模の工事は1人で担当しています。基本的な監督業務全般をほぼ一人でこなします。

ー人材不足を解消するにはー

まず、土木のイメージを変える必要があると思います。私は、You Tube・TikTok中毒でSNSをよく見ます。最近「現場作業は底辺の仕事」「労働している段階で人生終了」などと言っている人をよく見かけます。

こういう発信を若い小学生~大学生が見ることで、『イメージが先行して入職しない→人材不足』という悪循環に陥っているのではないでしょうか。

逆にこの配信技術を使って土木のイメージを変えることができれば、人材不足は解消できると思います。例えばインフルエンサーと大手企業が何か作るとか、若い世代が目にする機会を増やしていけば、今後人材は増えると思います。


3.設計変更への対応

当初設計から変更なく終わる工事など存在しないし、現場ごとに大なり小なり変更はあると思います。

変更に対して、現況の図面作成や数量計算等で概算金額を計算して提案する場合もあれば、図面変更や工法ががらりと変わる場合もあります。

設計変更は、

  • 施工計画の変更
  • 下請け業者の選定
  • 工程の見直し
  • 概算金額
  • 材料の納期
  • 追加の許可申請

これらを早急に作成し、発注者の承認を得なければなりません。大きな変更の場合、工期延長をしてもらいたいところですが、発注者の年度予算の都合等で延期もあまりできないのが現実です。

私が過去に一番時間がかかった例は、工法や再設計などの変更対応です。発注者から1週間~3週間で図面等が来て、そこから上記の内容を対応して、合わせて1カ月程度かかりました。


4.その他(ICT)

これは結構あるあるですが、「現場管理の負担軽減のために、書類等を減るようにしました。」みたいな感じの新技術や改正があるのですが・・・あんまり減ってないし、むしろややこしくなって仕事が増えた気がします。

例えば、ICTを実施することになりソフト・ハードを揃え始めます。しかしCADが3Dになったことで、使い方がイマイチわからず、設計図が一部変更になっても対応が遅れたり、現地では設計データを入れた施工建機が正常に動かないなどの問題が勃発し、その対応に追われる。

ソフトもハードも最新、しかし利用する人間のアップデートができていないがために、結果仕事が増え、時間がかかるのです。


まとめ


人材不足を解消しようと国も労働時間や週休2日の導入など色々行っていますが、正直現場の監督からしたら有難迷惑・・・週休2日なんて職人さんと揉める火種でしかないし、工期圧迫・残業製造政策としか思えません。

本気で「月45時間以内かつ年360時間以内の時間外労働」を実現しようとするのであれば、人材不足・工事書類の省略を行わないと厳しいです。国として取り組むのであれば、工期の余裕や賃金の底上げなどの方が先だと思います。


【記事のライター:gero-14Rさん】
兵庫県出身です。大学卒業後施工管理者をして10年になります。
公共工事の河川災害復旧工事をメインにこの10年間工事に従事してきました。
主な工事 砂防・法面工事・道路掘削・河川ブロック積・急傾斜地対策工事など
まだまだ、業界の中では若手の未熟ものですが自分の経験や現場で感じた事を執筆します。
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