今回は私が、監督員として担当した橋梁補修工事の現場についてご紹介したいと思います。橋梁補修工事は一般に橋梁の長寿命化を目的として、橋梁定期点検による補修対象橋梁の抽出→橋梁補修設計→橋梁補修工事という流れで多く行われています。
橋梁定期点検は道路法の道路における橋長2.0m以上の橋に対して5年に一回行われ、損傷の程度にもよりますが、補修対象となった橋梁は次回点検時(5年以内)までに補修を行う必要があります。今回ご紹介する工事も上記の流れで行われた市役所により発注された工事でした。生活道路の比較的小さな橋の補修工事についてのご紹介です。
〇工事名:(仮称)A橋外2橋橋梁補修工事
〇橋梁概要及び主な工種
橋梁 | A橋 | B橋 | C橋 |
橋梁概要 | 2径間RCT桁橋 橋長20m 幅員7m | 床板橋 橋長3.5m 幅員2.5m | 床板橋 橋長2.0m 幅員1.8m |
主な工種・数量 | ・ひび割れ補修工(充填及び注入)100m ・断面修復工(防錆あり・防錆なし)0.35m3 ・表面含浸工290m2 ・伸縮装置取り換え2箇所 ・路面再生工 100m2 | ・断面接合注入工2.2m2 ・うき接合注入工3.2m2 ・断面修復工(防錆あり)0.11m3 ・表面含侵工15m2 ・水切り材設置工7.0m ・路面再生工 15m2 | ・断面接合注入工8.0m2 ・断面修復工(防錆あり)0.30m3 ・水切り材設置工6.0m |
A橋で主に発生した問題です。設計から1年ほどでの発注ではありましたが、ひび割れ延長が伸びていたり、うきが広がっていたりと損傷が進んでいました。A橋については、川に架かる橋ではありましたが、海からの距離が50mほどとかなり近かったことも損傷が進んでいた原因の一つに考えられます。当初設計で、100箇所以上の損傷箇所がある中での数量の増加は、管理写真や管理図など漏れなく行うことが大変になりました。また、変更数量も多くなるため、施工者と発注者で損傷に対しての補修方法の見解や材料の考え方、補修範囲の統一も重要となりました。
基本的なことではありますが、足場設置後、施工前に調査をかけマーキングを行いました。雨に濡れない橋梁下部であれば、調査設計時のマーキングが残っていることも多いです。新規で追加になるものは新規の「S」など記号をつけて新たに番号を振り、これをもとに施工者・発注者で立会を行いました。
工期に余裕がある場合は、数量を算出し、概算を出しておくといいと思います。変更数量の増加が設計変更に反映されるための工夫です。また、橋梁補修材料の納入も無駄や不足なく済みます。
現在、私は設計者側にいますが、設計段階において発注者と現地で補修方針を共有することが重要だと感じています。またその際、損傷の原因追及もしっかりと行わなければなりません。橋梁については足場や点検車が必要なため発注前に再度近接目視できないような場所が多く、発注者側も施工前の調査段階では原因追及にスピード感が求められるためです。施工者の負担とコストの増大を削減しなければならないと感じています。
こちらはB橋での事案です。B橋はA橋から山あいに上った集落に入る場所にありました。山側からその集落へ入る道もあるのですが、車で入るには山道をかなり遠回りしなければなりません。
そのため、工期短縮のため橋面防水における工法の選定、及び施工方法が重要になりました。
交通量も少なく、対象橋梁がコンクリート橋であったことから、工法として薄層遮水性舗装を採用しました。橋面の遮水という橋梁補修の目的の達成はもちろん、常温材料での施工も可能となることから、交通開放も早く工事時間も短時間で終えることができました。
1車線ずつの幅員の橋梁であれば、片側交互通行を行いながら施工することは可能ですが、小さな橋梁は全面通行止めにせざるをえません。またそういった場合、橋梁の持つ特性上、交通が分断され、場所によっては陸の孤島を作ることになってしまいます。
交通量と損傷度を考えると、今回のような工法の採用もありだと感じました。
施工する上では、当たり前のことばかりだったかと思いますが、橋梁補修工事は今後、予防維持的な側面も含めて、ますます重要になっていくと考えます。また、橋梁分野は新材料や新工法が多くでてくる分野であると感じています。そういった技術をかけ合わせながら現場がよりよくなるようこれからも考えてきたいと思います。
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